今月の特集
2013.1「高齢期について」
社会化期、若年期、成熟期と説明してきた動物の行動学。
今回は高齢期についてです。
高齢期については2回に分けてお話したいと思っています。
動物の高齢期...その1
生活環境の向上(食餌、衛生面等)や医療の進歩などによって犬や猫の寿命は延びました。犬の寿命は犬種や体格によって大きな幅があり、小型犬では長寿傾向であり、大型犬では小型犬に比べて寿命がやや短い傾向にあるように思います。
猫の場合は品種による寿命の長さは知られていません。
動物の寿命が長くなった要因として、室内飼育、食餌管理、病気の予防、早期発見、早期治療、去勢、避妊手術の実施などが挙げられます。猫の場合は室内飼育の普及によってかなり寿命が延びたと言われています。
年齢を重ねることによって動物の行動は変化します。それを生理的変化と病気による変化とを見分けることがとても大切となります。
生理的変化とは、感覚器系、神経系、筋肉系、消化管系、泌尿器系、循環器系などの機能が老化によって低下することが原因となる変化を言います。
例えば....
感覚器 部屋の物に頭をぶつけるようになった。眼が見えていないのでは?
名前を呼んでも振り向かなくなった。耳が遠くなっているのでは?
神経 最近反応が悪い。足腰が立たなくなって来た。
筋肉 痩せて来た。元気がなくなってきた。寝ていることが多い。
消化器系 最近吐くようになった。排便の回数が増えてきた。または減って来た。
便が軟便、下痢便または固くなった。
泌尿器系 頻尿になってきた、尿の色が変わって来た、尿の量が増えて来た、または減って来た。
循環器系 最近疲れやすい、ちょっとした運動で呼吸が荒くなる。散歩に行きたがらない。
咳をするようになった。
病気に付随した変化とは?
関節炎、歯周病、甲状腺機能低下症または亢進症、白内障、糖尿病、高血圧、心臓病、認知障害、腫瘍などこれらの病気にかかることによって生じる行動変化です。これらはいずれも加齢に伴い、病気になる可能性が高くなります。
実際に生じる行動変化は生理的変化と病気に付随した変化で違いはありません。しかし、行動変化が病気に付随した変化であれば、病気の早期発見、早期治療の指標となり、適切な治療により変化した行動が元に戻ることも十分にあります。
このような理由から高齢の動物達には定期的な健康診断が推奨されます。定期的な健康チェックは6ヵ月に1度位の割合で実施するのが良いと思います。毎日の動物達の観察がとても大切ですね。