各種ワクチン・病気予防
皆さんは1年に1度のワクチン接種を実施していますか?
「うちの子には接種していない」
「なぜ1年に1度接種しないといけないの?」
「子犬の時に実施したから大丈夫!」と時々診察の時にご家族の方から聞くことがあります。
混合ワクチンは毎年接種する必要がありますので、まずはお電話していただき、そして 来院をお勧めします。
ウイルスに感染した子達の治療は困難なことが多く、死に至ることも多々あります。
ウイルス感染を起こしてからの治療を実施するよりもワクチン接種をしっかりすることで大切です。
「ワクチン接種をする」ということは動物達の免疫力をつける、つまり抵抗力をつけることを言います。1年に1度、定期的に接種することで免疫力を維持させて病気から動物達を守ってあげましょう。
またワクチンを接種する際には動物達の体調が良い時でないと接種できません。「元気、食欲がない。嘔吐、下痢など消化器症状がある」など体調の悪いときに接種することは出来ませんので、まずは、お電話をして来院して頂ければと思 います。
《3種混合ワクチン、5種混合ワクチン、FIVワクチン》
◎予防出来る病気
1.猫ウイルス性鼻気管炎 2.猫カリシウイルス感染症
3.猫汎白血球減少症 4.猫白血病ウイルス感染症
5.猫クラミジア感染症 6.猫免疫不全ウイルス感染症
《5種混合ワクチン、8種混合ワクチン》
◎予防出来る病気
1.犬ジステンパーウイルス感染症 2.犬パルボウイルス感染症
3.犬アデノウイルス2型感染症 4.犬伝染性肝炎
5.犬パラインフルエンザ感染症 6.犬コロナウイルス感染症
7.犬レプトスピラ感染症(黄疸出血型) 8.犬レプトスピラ感染症(カニコーラ型)
毎年、春になると狂犬病の予防接種が全国で始まりますね。
ワンちゃんをお飼いなっている皆さんはご存知だと思います。
ですが、診察で以下のようなことを感じ、また質問を多く受けます。
「混合ワクチンと狂犬病ワクチンを混同している人が多い」
「日本で確認されていないのになぜ、毎年接種しないといけないのか?」
「混合ワクチンと狂犬病ワクチンを一緒に接種してほしい」
などなどいろいろあります。
まず、「混合ワクチンと狂犬病を混同している」
来院される方で混合ワクチンと狂犬病のワクチンを混同されている方がいらっしゃいます。そこで、「なぜ狂犬病ワクチンを接種するのか」をお話します。
狂犬病ワクチン接種が法律で定められています。
狂犬病ワクチンはワンちゃんを飼育するうえで、法律で定められているワクチンです。 ワンちゃんを家族として迎えるためには3つの法律が義務づけられています。
1)居住している区市町村に飼い犬の登録をする。
2)飼い犬に年1回の狂犬病ワクチンを受けさせること。
3)鑑札と注射済票を飼い犬の首輪などに装着すること。
海外から狂犬病ウイルスが侵入した場合に、流行を防止するため。狂犬病は世界中で発生しており、感染、発症した場合には100%死亡するとても恐ろしい感染症なのです。もし感染した場合は殺されてしまうため ワンちゃんが狂犬病に感染した場合、法律により殺処分されてしまうのです。また、感染したワンちゃんを治療することは不可能です。
狂犬病についてあまり大きな話題になることがありませんが、本当に怖い病気なのです。
次に、 「日本で確認されていないのになぜ、毎年接種しないといけないのか?」
毎年接種することを法律で定められているため。 年1回の接種が法律で定められているため、接種を受けないと法律違反となるのです。
十分な免疫を維持するため「数年に1度の接種 で十分ではないか?」などという意見も聞きますが、ワンちゃんの免疫力を維持するために、毎年の接種が必要になります。ワンちゃん同士の接触が多かったり、室内で飼育される方が増えており、人との接触が密になっているため、狂犬病ワクチンがとても重要とされているのです。
最後に、「混合ワクチンと狂犬病ワクチンを同時に接種する」
これはワンちゃんに良くないと考えています。
異なるワクチンを同時に接種することでの身体への負担が増す可能性があります。
また、同時にワクチンを接種した後に体調が悪くなってしまった場合、混合ワクチンが原因なのか、狂犬病ワクチンが原因で体調が悪くなったのかわから なくなってしまうからです。
同時に接種すれば来院が1回で済むという考えがあるかもしれませんが、ワンちゃんの身体の負担を考えて必ず混合ワクチンと狂犬病ワクチンの接種を分けてしてあげることが必要なのです。
接種方法、接種時期、その他疑問点や気になることがあれば お気軽にお問い合わせ下さい。
混合ワクチン、狂犬病ワクチンの大切さはおわかり頂けたでしょうか?
次に「フィラリア予防の大切さ」のお話を致します。
フィラリア症とは?
犬糸状虫とも言われる心臓や肺に寄生する素麺のような寄生虫です。 知らない間に身体の血液中に寄生虫が広がり、放置すると死に至ることもあるとても怖い病気なのです。
以前はこのフィラリア症により命を落とすワンちゃんが多くいましたが、予防方法が確立され、感染しているワンちゃんの数は減少したと言われています。
しかし、今でも東京都内で感染しているワンちゃんが確認されているだけに毎年予防をしっかりして頂くことをお勧めします。
どのように感染するのでしょうか?
ご存知の方も多いと思いますが、
フィラリアに感染している犬から蚊が血を吸い、蚊の体内でフィラリアの幼虫が成長します。
↓
その蚊が他の犬を吸血します。
↓
吸血と同時に蚊の体内にいたフィラリア幼虫が犬に感染します。
↓
フィラリアの幼虫が数ヶ月かけて体内を移動して心臓に到着します。
↓
心臓内で成虫となり、繁殖し多くの幼虫を生みます。
↓
その幼虫がまた吸血に来た蚊に吸われて他の犬に感染します。
というサイクルがあるため、フィラリアに感染しているワンちゃんを無くしていかない限り、フィラリアはいなくならないのです。
感染した場合の症状は?
感染初期では症状がでませんので、以下のような症状が出て来た時には病気がかなり進行している可能性があります。
1)咳をするようになる
2)元気、食欲がなくなってくる
3)散歩に行きたがらない、呼吸が苦しそう
4)お腹が膨らんでくる
5)血尿をするようになる
感染したワンちゃんの治療はどうするの?
ワンちゃんの年齢や全身状態、感染したフィラリアの数などにもよりますが、治療にはかなりの危険が伴います。
フィラリアの数が多い場合は寄生虫を摘出する手術が必要になります。
フィラリアの数が少ない場合は飲み薬での治療となりますが、長期間の投薬が必要になります。
治療がうまく出来たとしても、後遺症が残ったり、一生涯治療が必要になる場合もあります。
予防方法は?
予防は1ヶ月に1回、お薬を与えて頂くことで予防が可能です。
お薬の種類としては、お肉タイプ(チュアブル)、錠剤タイプ、皮膚に液体を垂らすタイプがあります。
それぞれ、お薬の良い点、悪い点がありますので、ワンちゃんネコちゃんに合うお薬を選びましょう。
お薬を与える期間は?
「蚊のいる時期に飲ませれば良いんですよね?」
と質問を受けることがありますが、一概にそうとは言えないのです!
予防薬は、蚊の吸血時に犬の体内に侵入したフィラリアの幼虫が大きくなる前に駆除する薬なのです。蚊がいなくなった翌月の月まで飲ませて頂いてしっかり予防をする必要があります。お住まいの地域によって予防の期間が異なる場合がありますので、必ずかかりつけの動物病院の指示に従って飲ませて下さい。
近年の温暖化の影響で蚊が確認できる期間が長くなっています。
通年を通して予防薬を飲ませる必要が出てくるのも時間の問題かもしれません。
フィラリアの予防、狂犬病ワクチン、混合ワクチンについて ご説明をしましたが、次は「ノミ、ダニの予防の大切さ」についてです。
「ノミ、ダニの予防」はフィラリア予防やワクチン接種などに比べて更に予防をされている方が少ないようです。
来院される方々は.....
「市販の薬で良いでしょう?」
「ノミに刺されたら薬をもらいにくるよ」
「都内では予防しなくてよいでしょう?」
「暑い時期だけの予防で良いのでしょ?」
などなど診察をしていて色んな解釈をされている方々が多くみられます。
ノミ、ダニが動物達に寄生すると「痒がる」というのが一般的に知られているようです。ですが、動物達が痒がるというだけの症状では済まないことを知って頂く必要があります!
今回はノミの予防の大切さをお話したいと思います。
1.ノミアレルギー性皮膚炎
ノミが寄生して、吸血を繰り返すことでアレルギー反応が出ることが多々あります。このアレルギーは非常に痒みを伴い、自分で出血するほど噛んだり、脚で掻いたりします。
また、アトピー性皮膚炎を持っている子は更に症状が強く出ることがあるため、注意が必要です。
2.瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)
お腹の中で成長する寄生虫です。ヒトではサナダムシと呼ばれることがあると思います。ノミが寄生することでこの寄生虫がお腹の中で繁殖することが多々あります。この寄生虫は以下の順番で繁殖して行きます。
ノミが吸血する(ノミの餌は動物達の血液です)
↓
動物は痒がって噛んだり舐めたりする。
↓
ノミを舐めて食べてしまうことでノミの中にいた瓜実条虫がお腹の中(消化管)で成長する
↓
成長した瓜実条虫が卵を持ち始めると身体の一部分(片節)が取れて肛門から出る。
↓
その片節から卵が出てくるとノミの幼虫が卵を食べて身体の中に瓜実条虫を取り込む。
↓
取り込んだノミが成長して、動物を吸血する。
↓
動物は痒がって噛んだり舐めたりする。
というようなサイクルが続いてしまうのです。
この寄生により軟便や下痢、体重減少などにつながることもあり、またこのサイクルを止めないと1年中繰り返すことになります。
3.予防は1年を通して必要です!
ノミは暖かくなると出てくると思われていますが、1年を通して存在しています。
特に室内ではタンスの隙間やカーペットの中にノミの幼虫が隠れていることがあります。特にノミの幼虫は暗く、湿度が高いとこを好み、自宅の中で1年を通して生活します。ですから、暖かくなってからの予防だけでなく、1年を通しての予防をして頂き、室内を清潔にして頂く必要があるのです。
皆さんはマダニを見たことはありますか?
マダニは野山だけに生息するもの。都内では生息しない。見かけない。と思っていらっしゃる方が多いと思います。ですが、実際に東京都23区内でも実際に生息することが確認されおり、実際に当院の近隣でも犬に寄生したことが確認されています。
マダニは公園や河川敷の遊歩道、雑草が生えているところなどに多く生息しています。
その場を通る犬や猫、その他の動物に寄生して自分の身体の何十倍になるまで吸血します。
マダニが血を吸うことも問題ですが、それ以上に犬や猫の命に関わる「バベシア」という病原体に感染することが問題となります。
ノミ、ダニが動物達に寄生すると「痒がる」というのが一般的に知られているようです。ですが、動物達が痒がるというだけの症状では済まないことを知って頂く必要があります!
今回はノミの予防の大切さをお話したいと思います。
1.「バベシア症」という病気
マダニが動物の血を吸血した際にバベシアが血管内に入り、更に赤血球内に侵入して赤血球を破壊します。そして他の赤血球に感染して破壊を繰り返し、増殖していきます。赤血球は身体に酸素を供給する役割を担っていますので、破壊が続けば貧血を起こし、ショック状態に陥り、命を落とす事もあるのです。
2.広がる「バベシア症」
マダニは発育の各段階(幼ダニ→若ダニ→成ダニ)ごとに吸血を繰り返します。各発育段階における3回の吸血機会のうち、どれか1匹がバベシアに感染していると、次の吸血の際に別にバベシアを感染させてしまいます。また、バベシアはメスの成ダニの卵巣を通過して卵に移動出来ると言われてお、生まれた幼ダニ全てにバベシアが体内にいることになります。その結果、感染を広げることになるのです。
3.予防の大切さ
今までこのバベシア症は西日本、九州などで感染が報告されていましたが、近年、関東地方でも感染例が報告されています。温暖化などの影響も指摘されており、日常的なマダニの予防を実施することが大切です。
その予防をして頂く為にもマダニ、ノミの感染を予防する内服薬や皮膚に滴下する液体の薬がありますので、確実に実施して頂ければと思います。